御堂筋本町ミライ会議

01 ビジネスの街から、複合的な街へ。

御堂筋(徒歩2分/約100m) 御堂筋(徒歩2分/約100m)
いま御堂筋を中心とする船場エリアは、大きく変わろうとしています。それは企業のビルが林立する従来のビジネスエリアから、「働いて、暮らして、楽しむ」という複合的な街への変化です。

そもそも船場は江戸時代以来、多くの商人が集まった「商いの街」でしたが、そこには多くの人々が暮らし、大阪の市民文化の発信拠点でもありました。船場は大きく北船場、中船場、南船場とあり、本町は北船場と中船場のちょうど境目ぐらいに位置しています。近代化の過程で道路が拡幅する前においては、大阪では東西軸が主要であり、本町通りはその幹線でした。船場も東西方向に特徴のある商店が集まって、街が賑わっていたのです。1937年に「大阪の新たなシンボルロード」としての御堂筋が完成してからは、南北軸が重要な機能を果たすようになりました。つまり大阪の発展は、東西軸と南北軸が交わる御堂筋本町が中心であったわけです。
都市における街には本来、そこで「働いて、暮らして、楽しむ」という機能が全て備わっています。船場エリアも例外ではありませんでしたが、昭和の高度成長期に入ってからは住職分離が進み、商人たちが次々と帝塚山や奈良の学園前、阪神間等の郊外に住むようになると、船場エリアから「住」の要素が失われていきました。その流れが変わってきたのが、ここ10年ぐらいのこと。大阪の都心部では新しい住居やホテルがどんどん増えていますが、船場エリアの人気は非常に高いものがあります。これは「商いの街」としての大阪の伝統を象徴するのが、船場エリアだからでしょう。新旧のビルはいずれも格式のあるもので、街の景観も美しく保たれている。もちろんアクセスは至便だし、週末はとても静か。このエリアの本来の魅力が、見直されているのだと思います。
三休橋筋(徒歩2分/約120m) 三休橋筋(徒歩2分/約120m)
オペラ・ドメーヌ高麗橋(結婚式場)(徒歩9分/約700m) オペラ・ドメーヌ高麗橋(結婚式場)(徒歩9分/約700m)
船場ビルディング(徒歩6分/約430m) 船場ビルディング(徒歩6分/約430m)

02 世界最新モデルを目指す「御堂筋」

御堂筋将来ビジョンイメージイラスト(出典元:御堂筋完成80周年記念事業推進委員会

御堂筋将来ビジョンイメージイラスト(出典元:御堂筋完成80周年記念事業推進委員会)

2018年には、大阪市が中心となって『御堂筋 将来ビジョン』が策定されています。私もアドバイザーとして関わりましたが、そこでは「世界最新モデルとなる、人中心のストリートへ」との大きな方向性が示されています。

例えば、オーストラリア連邦メルボルン市のスワンストンストリート。大阪市とメルボルン市は昨年、姉妹都市連携40周年を記念して、御堂筋とスワンストンストリートの間で「姉妹ストリート協定」を締結しています。同ストリートでは1986年から歩行者とトラムを優先する空間化プロジェクトが実施されて、現在では昼間は自動車の通行を止めて、完全に歩行者と自転車を優先するようになりました。並行して、伝統的な景観を保ちながら、歩道へのカフェやレストランのテラス席の設置を実現しています。ストリートを広場として使うという、成功事例の一つですね。 もうひとつは、アメリカのポートランド。今では住みやすい都市として世界的に知られるようになったポートランドですが、ひところは都心部から空洞化していました。そこに、低層部には賑わいのための商業施設を入れ、中層部にはオフィスを入れ、上層部には住居と、縦方向に異なる機能を積み上げていきました。そして通りは歩行者と自転車、路面電車中心に切り替えました。
あと個人的に注目しているのは、スペイン・カタルーニャ州の都市、バルセロナです。中心にあるランブラス通りは、両側に車が通り、真ん中が広場になっており、ここに市場や観光客向けの屋台などが並んでいます。

御堂筋も自動車中心の道路から、歩行者中心のものにシフトしていきます。そのために現在、さまざまな社会実験を重ねていますが、前提となるのは、「住みやすい街」を目指すということです。

世界の魅力ある街は、単にビジネスの中心だとか、金融、ファイナンシャル・センターである以上に、そこが「住みやすい街」であるということが問われます。安全に暮らせて、教育環境も優れ、文化的にも商業的にもいろんな楽しみがある。そういう「住みやすい街」に多くの企業が立地し、投資も集まり、当然ながら働きやすい環境も整う。大阪が目指すべきところは、そうした世界で最も素晴らしい「住みやすい街」でしょう。その象徴的な場所が御堂筋本町であり、ここから大阪はダイナミックに変わっていくはずです。

03 大阪の新たな進化は、御堂筋本町から。

提供:経済産業省

提供:経済産業省

2025年に開催が決定している大阪・関西万博に向けて、本町をハブとする東西軸に、再び注目が集まっています。万博会場ができる夢洲へ向けての主たるアクセス方法が中央線になることが想定されるなかで、二つの軸が交わる御堂筋本町は、新しい大阪の中心になると思います。

そこでのキーワードは「国際化」です。私自身は1970年の大阪万博からダイレクトに影響を受けた世代ですが、その時と現在では、大阪の状況は大きく異なります。当時は「映画ではなく、初めて生で外国人を見た」というレベルでしたからね。一方で、もし万博が行われなくても、大阪の街全体での国際化の流れは明確にあるのですが、そこに起爆剤としての万博があることで、変化に拍車がかかると思います。
大阪が国際都市を目指すのであれば、多くの国々のさまざまな人々が観光で訪れるだけではなく、実際に街で暮らすようになるべきでしょう。東京やニューヨークやパリ、ロンドンなどの大都市ではそれが当たり前なのですが、大阪の都心は、まだまだ国際的であるとは言えません。万博を契機に大阪を訪れる、海外からの多くの人々は、何らかの形で本町エリアを経由するでしょう。その時、御堂筋本町は、魅力ある住みやすい街として、世界各国からの来訪者に強い印象を与えると思います。御堂筋本町は、大阪が国際都市として新たな発展を遂げる起点となるポテンシャルを秘めた場所なのです。
橋爪 紳也氏

Profile

橋爪 紳也

Hashizume Shinya

大阪府立大学研究推進機構特別教授、大阪府立大学観光産業戦略研究所長、船場倶楽部特別顧問。1960年、大阪市生まれ。京都大学工学部建築学科を卒業後、大阪大学大学院工学研究科博士課程修了。工学博士。現在、大阪府特別顧問、大阪市特別顧問も務める。2017年に「生きた建築ミュージアム」の活動を対象に、日本建築学会賞を受賞。「大大阪の時代を歩く」(2017年/洋泉社)など、著書は70冊を超える。
※画像提供 / 経済産業省

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